【完】華道家の若旦那は、ウブな彼女を離したくない。
「小妻さん、やっと会えた……」
「えっ……千賀さん?」
店内には、濃紺の着物に同じ色の羽織を着た男性がいた。いつもの店内なはずなのに何故かキラキラオーラが出ている。
「連絡してくれないから心配したよ、入ってなかったかな」
「いや、入ってました……けど」
さっきまで考えてました、だなんて言えない。
「じゃあ、何で連絡してくれない? 俺はずっと待って――」
「ここじゃなんですから……場所変えましょう!」
お客様の視線が痛いし、何よりも着物だと目立つ。