【完】華道家の若旦那は、ウブな彼女を離したくない。
◇引っ越し
「花陽ちゃん、サインして?」
翌朝、起きるとお迎えにより一旦帰って行った千賀さん……もとい、貴敬さんは部屋まで戻ってきた。
「これ……いつ、もらってきたんですか?」
「これは昨日の昼間に役所で頂いてきたんだよ」
「そ、そうですか……」
うん、と頷く貴敬さんはとても嬉しそうに笑っている。
テーブルの上にはA3サイズの【婚姻届】が差し出され、彼が持ってきたのかペンも置かれた。よく見れば、保証人の欄に店長の名前が書かれていて「いつの間に!?」と心の中で思う……彼の顔を一度見てからペンを握る。
【妻になる人】という欄に名前や本籍、住所等を記入し自分の印鑑を押した。
「……よし、今から役所行こう」
「え、千賀さんもうですか?」
「そうだよ。花陽ちゃん、今日から花陽ちゃんも千賀なんだから」
そうだった……。