【完】華道家の若旦那は、ウブな彼女を離したくない。
私もお辞儀をして挨拶をすると、貴敬さんとエレベーターフロアに向かった。
エレベーターの扉が開くと、エレベーターに乗る。だけど階のボタンがない。
「貴敬さん、エレベーターのボタンは……?」
「ボタンはないよ、鍵があれば部屋の階まで行けるよ」
「そうなんですね……すごい」
本当にセキュリティーバッチリなんだなぁ。エレベーターが開き降りると、部屋は四部屋しかない。
「部屋は3404号室、右奥だし分かりやすいでしょ?」
「はい、そうですね」
貴敬さんは扉を開けてくれて先に入ると、ブラックやグレー、ホワイトを基調にしたモダンで落ち着いた空間がひろがっている。
キッチンはグレーでおしゃれだし、窓から見る景色もとても綺麗。
「2LDKで広いでしょ? 家具とか好みじゃなかったら違うの買いに行こう」
「えっ、大丈夫です!」
「そう? ならいいんだけど……」
引っ越し初日は驚き満載でやっていけるかな、と不安を感じた。