【完】華道家の若旦那は、ウブな彼女を離したくない。
貴敬さんは、私の頭をポンっと触れると浴室へと向かった。彼が出て行き、リビングのドアが閉まる音が響く。
彼がお風呂入っている間、何してよう……。私はキョロキョロしながら立ち上がると、大きな窓に近づいた。
「わぁ〜……すごい」
そこには都会のネオンが輝いている夜景が本当に綺麗だ……こんな景色を毎日見られると思うとなんだか贅沢すぎる気がする。
「花陽ちゃん」
突然呼ばれて驚き、ビクッと肩が跳ねた。
「待った?」
「ううん……窓からの景色が綺麗で、眺めてたの」
「そう。これからは毎日見られるよ。花陽ちゃん、ワインでも飲まない? 結婚記念に」
「飲みたいです!」
貴敬さんは「さぁ、座ってて」と言うと、ワインセラーで瓶一つ選びグラスをふたつ持ってきた。
「ちょっと待って、チーズあるんだった」
「えっ」
「これ、美味しいんだよ。どうぞ」
ワイングラスをふたつ並べると、貴敬さんはワインをグラスに注いでくれた。