【完】華道家の若旦那は、ウブな彼女を離したくない。
元許婚……か。そりゃそうだよね。
だって貴敬さんは、由緒正しき花山院流の若旦那であり次期当主だ。許婚くらいいたっておかしくない。貴敬さんも後継者のために結婚したのかもしれない。
初夜の時も、避妊してなかったし……。
「ただいまー花陽ちゃん」
そんなことを考えていれば貴敬さんが帰ってきた。
「あっ、お帰りなさい貴敬さん……貴敬さんも飲みますか?」
「うん。もらおうかな」
貴敬さんは「手、洗ってくるね」と言うと、リビングから一旦出ていった。私は立ち上がると、キッチンに立ち電気ケトルに水を入れてスイッチを押した。
それと同時くらいにリビングのドアが開いて「花陽ちゃん」と呼ばれる。
「貴敬さん、私お湯の準備するので座って待っていてください」
私が彼のマグカップを取り出し、キッチンの作業台に置く。