【完】華道家の若旦那は、ウブな彼女を離したくない。
「……花陽ちゃん?」
「あっ、ごめんなさい。紅茶淹れますね!」
私はティーポットを持ってきて茶葉を新しいのに変えると、お湯をマグカップに入れて温める。ティーポットにも注いで蓋をして蒸らす……っと。
「か、花陽ちゃん……話聞いて」
マグカップのお湯を捨ててティーポットの紅茶をマグカップに注ぐと「出来ました、飲みましょう」と元気な声で言うとコップをソファのあるテーブルに置いた。
「ごめんなさい、貴敬さん……少し席外します。すみません」
「……っ……」
私はリビングを一旦出ると、急に涙腺が緩む。
そう言えば貴敬さんにちゃんと好きだって……求婚してくれた日以外言ってもらってない。もしかしたら、許婚さんとは結婚したくなくて偶々仲良かった私に求婚したのかも。
優しさは全て、私にじゃなくて貴敬さん本人のため……だったりするのかな。
何故か昔の塞がったはずの、傷が剥がれそうになる……なんでだろうな。
潤んでいるものを手で拭ってからリビングのドアノブに手を掛けた。一度深呼吸をして、開けようとした瞬間ドアが軽くなり開いた。