【完】華道家の若旦那は、ウブな彼女を離したくない。
「わっ!」
驚いて後ろに躓きそうになり、貴敬さんの腕が背中に回された。
「……っと、花陽ちゃん大丈夫だった!?」
「……っ……」
「花陽ちゃん、今日は夕食俺が作るよ。何食べたい?」
貴敬さんは離れると、そう私に聞いた。
「え?」
「俺、恋愛経験ほとんどないから気のきいたこと言えないけど……花陽ちゃんの悲しい顔は見たくない」
「……っ……なんで、」
「俺、花陽ちゃんに心底惚れてるから。めちゃくちゃ好きなんだよね」
貴敬さんは私にそう言うと、私の体を引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
「花陽ちゃんだけが頑張る必要ない。それに子供は授かり物だよ。俺は今、花陽ちゃんとの時間を大切にしたい」
「貴敬さ、ん……」
「ねっ? だから、今日は美味しいもの食べよう」
彼はそう言って微笑むと、私を持ち上げてリビングの中に入った。