溺愛ウエディング~最後の夜に授かった赤ちゃんは社長の子、もう二度離さない~
『汐留ヒルズベイサイド』


『高屋エルネ』の新店舗の視察を終え、隣の高層ビルの中にある『ヘブンズホテル・汐留ベイサイド』の最上階レストラン『エルミタージュ』で夜のフレンチコースを食しながら父と五年振りの対面を果たした。

「加那斗お前が『キングダイニング』の社長に就いたと訊いた時は驚いたぞ」

「…事後報告ですいません…」

「・・・敦司様夫妻の方には謝罪しに行ったのか?」
「いえ…」

「もう五年以上の前の話だが…敦司様にだけはキチンとけじめをつけてくれ。激怒した林田を根気強く窘めてくれたのは敦司様だからな…」


「はい…」

父はそう言って、グラスの水を飲んだ。

「父さんにも謝りたいと常々思っていました。本当にあの時は申し訳ないコトをしました」

「ドバイには一人で行ったのか?笹倉さんとはあれから連絡をとりあっていないのか?」

「いえ…七海とは入籍しました…実は子供も居ます…五歳のオトコの子です…」

「・・・その子は・・・」

「俺と七海の子です。父さんの孫です…名前は奏多と言います。近いうちに七海と奏多を連れて、挨拶に行きますので、その際はよろしくお願いします」

「孫か…そうか…楽しみに待ってるぞ…加那斗」


父は目尻にシワを寄せて、孫の奏多の存在に喜んでいた。
俺と七海は奏多に救われた。

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