溺愛ウエディング~最後の夜に授かった赤ちゃんは社長の子、もう二度離さない~
許婚はお嬢様
「加那斗…ただいま」

「!!?」
私が彼にコピーした資料を手渡しているとキャリーケースを持って一人の女性が入って来た。

女性は馴れ馴れしく加那斗さんの名前を呼ぶ。

「裕美…」

「今日、帰国したの…その足で貴方に会いに来たのよ…加那斗」

彼女が加那斗さんの許婚の林田裕美(ハヤシダユミ)さん。
長くツヤツヤした豊かな黒髪。
なだらかな肩に均整の取れた手足。
美しい鎖骨の見える白いカシュ―クールのブラウス、淡いピンクの膝下のロングタイトスカートを穿き、肩にベージュのジャケットを掛けていた。

上品な雰囲気が全身から漂うお嬢様。

加那斗さんは突然の裕美さんの登場を嬉しくは思っていないのか、眉間にシワを寄せた。

裕美さんは応接ソファに腰を下ろして、長旅の疲れを見せたように深い息を吐く。

「…笹倉…コーヒーを二つ頼む」

「承知しました」

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