溺愛ウエディング~最後の夜に授かった赤ちゃんは社長の子、もう二度離さない~
妊娠…


その言葉を訊き、悪夢が過った。

また、私は消したい過去を思い出してしまった。

冷たい手術台に寝かされ、目から溢れる涙を瞼で堰き止め、麻酔で眠りに落ちていった。

麻酔から醒めると眩い蛍光灯の光に思わず目を瞑った。
私は父の子を妊娠し、中絶した。

あれは十七歳の夏。


相手が父であっても、ほんの数時間前まで私のお腹の中に居た子は私の子供。

渇いたはずの涙が瞳を溢れ出た。


私は現実でも瞳を涙で濡らしていた。
「ゴメン…七海」

加那斗さんの指先が私の瞳に溢れる涙を拭ってくれた。

「七海のキモチも訊かずに…俺が先走ってしまったようだ…」

彼は私の涙で反省の色を示した。

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