溺愛ウエディング~最後の夜に授かった赤ちゃんは社長の子、もう二度離さない~
場所をカンファレンスルームに移した。
「どうぞ…相良先輩」

奏弥は俺に自販機の缶コーヒーを差し出した。


横浜の明和学園高等部のサッカー部で知り合った。
実家は横浜では有名な産婦人科病院。
彼は産科医として、この東亜で働いていた。



「…子供を亡くされた悲しみは分かりますけど…奥さんを責めるのは筋違いだと思いますよ…相良先輩」

俺は奏弥を睨んだ。

「裕美のお腹の中に居た子は俺の子じゃない…元カレの子だ…」

「・・・でも、林田さんは・・・」

「・・・嘘を付いている…妊娠中でも、DNA鑑定できると訊いたぞ…調べてみれば分かる…」

「彼女はもう妊娠してませんよ。流産しました…受精卵に問題があって、流産を食い止めるコトはできなかったんです」

「・・・誰の子供か証明できないってワケか…」
「はい…すいません…」
奏弥は俺の言動に戸惑っていた。

「・・・お前にこんなコト言っても…仕方がないコトは分かってる…困らせてすまない…俺は帰る…」

俺は缶コーヒーを上着のポケットに押し込んで椅子から立ち上がった。

「…でも、二人はご結婚されるんですよね…」

「まぁな…」
俺は頷く。
「そう言えば…お前も披露宴の招待客だったな」

「はい…」



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