溺愛ウエディング～最後の夜に授かった赤ちゃんは社長の子、もう二度離さない～

口では私との未来を夢見ているけど、実際、彼はもうどうするコトも出来なかった。

アパートの解約を済ませた。私は東京から出て行く。
私は水面下で彼との別離を決めていた。

私の方から手を離さないと彼は愛と言う名の檻から出られない。
希望の光すら見いだせない私達。
檻の鍵を握っている私。
その鍵を開けて、彼を自由してあげないと。

愛する人が苦悩する顔は見たくない。

「俺達の別れも一週間後ってコトか？」

「はい…」

「…七海は俺のコト愛してないのか？」

「・・・最初から私達は世界が違い過ぎました…四年間半…お世話になりました…社長」

私は感情を殺し、無表情の仮面を被り、彼に頭を下げる。
新入社員だった私が秘書となったあの日。
「新入社員の君に社長秘書は務まるのか？」と心配された。
ひと目惚れした彼との二人三脚の仕事。
私は必死に努力した。その努力が報われ、そして、私達は恋人同士となった。

「…七海…」

切なげな彼の声が私の心を震わせる。

出来るなら、貴方と結婚したい。

貴方の子を産みたい。

貴方と可愛い子供たちに囲まれたごく平凡な幸せな家庭を築きたかった。