溺愛ウエディング~最後の夜に授かった赤ちゃんは社長の子、もう二度離さない~
彼の部屋で最後の夜を二人で過ごした。
ワインセーラーで寝かせたとっておきの秘蔵ワインで乾杯する。
「次の仕事は決まってるの?」
「いえ・・・」
「・・・東京は離れるんだな…」
「はい…」
私はフルートグラスのワインをチビチビと味わいながら飲んだ。
「何処に引っ越すの?」
「それは訊かない約束ですよ…加那斗さん」
未練がましそうに見る彼の目。
そんな風に見つめられると私の決心も鈍ってしまう。
「そうだったな…」
彼はワザとらしく呟く。
彼もグラスのワインを飲み、肴のスモークチーズに手を伸ばした。