陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 でも……。

「じゃあ、後で断りに行かないとな」

 そう言ったかと思うと、またキスの雨が降ってくる。

「んっ……あ、ひろ、くんっ……?」

「ん?」


 いや、ん? じゃなくて。

「お仕置きは、終わったんじゃないの?」

 聞き返すと、チュッと唇を吸われて陽呂くんの片手があたしの手を離した。

 その手はスルリとあたしの頬を撫で、そのまま首筋を通って下がっていく。


「ぅんっ……ひろくっんんっ」

 何だか、体がゾワゾワした。

「……お仕置きと、練習って言っただろ? ここからは練習」

「練習って……っ!」

 そういえばそんなことも言った気がする。


 もうアタマがふわふわしてまともに考えられない。

 でも、陽呂くんの手が胸のふくらみの上に乗ったとたんハッとする。

 解放されている片手でその手を掴み「ダメだよ」と伝えた。


「学校でこんなことしてバレたら、陽呂くんだって困るでしょう? だから、その……練習は、家でしよ?」

 あたしは、少し前にちゃんと気持ちを確かめ合ってからの方がいいんじゃないかと考えていたことも忘れてそう誘う。

 言ってしまってから思い出し、そして自分が口にした言葉の意味を考えてカッと顔に熱が集中した。
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