陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 練習って、つまりそういうことをするわけで……。

 しかも家で、ってなったらもしかしなくてもこの間みたいになってしまうってことで……。


 なおさら止められなくなるんじゃあ……。


 それを考えると顔の熱は冷めるどころか増していくばかり。

 そんなあたしを見た陽呂くんは、クスリと笑った。


「美夜、可愛い。……そうだな。練習は、家でしよっか?」

 納得してくれた陽呂くんだったけれど、メガネの奥の目は何だかまだ楽しそうで……。


 なんていうか、ネコ科の肉食獣を思わせる目をしていた。

「でもさ、もうちょっと……」

「え? ええ?」

 納得してくれたはずなのに、陽呂くんの手はさらに下がって脇腹の辺りを撫でつける。

 その唇もどんどん下がっていき……れろ、と鎖骨を舐められてしまった。


「っっっ!?」

 今まで首の辺りを舐められるのは血を吸われたときだけで……。

 つまり、“そっち”の目的で肌を舐められたことなんてなかった。


 その結果、あたしは痛いくらい鼓動を速めてギブアップを告げなきゃいけなくなる。

「ひろ、くん……も、むりぃ……」

 もはや泣きそうになりながら伝えると、「もう?」と驚かれてしまった。

 そして――。


「じゃあ最後にこれだけ……」

「っ!?」
< 62 / 205 >

この作品をシェア

pagetop