陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 ……。

 キーンコーンカーンコーン……

 予鈴が聞こえる。

 そのまま五分経って、本鈴が鳴るのをあたしは保健室のベッドの上で聞いていた。


 ガラッ

 ドアの開く音が聞こえて、失礼しますの声がないことで保健室の先生が来たことを知る。

 あたしは何とも言えない恥ずかしさから掛け布団を頭からかぶった。


 シャッとカーテンの開く音が聞こえ、続けて女の先生の声がする。

「あなたたち、どうしたの?」

 それに答えたのはベッドの横で椅子に座っている陽呂くんだ。


「……その、俺が具合悪くて連れてきてもらったんですけど……。彼女も具合悪かったみたいで……」

 陰キャらしさを取り戻した陽呂くんはボソボソと伝える。

 先生はベッドに近づいてきてあたしにも問いかけてきた。


「あなたはどうしたの? 大丈夫?」

 聞かれて、少しだけ顔を出す。

「……だいじょうぶ、です。少し休めば、治まると思うので……」

「あら、顔真っ赤。一応熱も測りましょうか?」

「……はい」

 顔が赤いのは別の理由だけれど、熱があるかもって事にしておいた方が無難だよね。


 先生が体温計を取りにベッドから離れると、陽呂くんと目が合った。
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