陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 あたしはキッと恨みを込めて彼を睨み付ける。

 申し訳なさそうな笑みを浮かべてるけど、陽呂くん絶対反省してないでしょう!?


 あたしはまた布団を頭からかぶって不満を態度で表した。


 学校で練習とかし出すし、家でしようって言ったのにすぐにはやめてくれないし、もう無理って言ったのに最後には……。


 キ、キスマークつけるなんて!


 自分じゃあ見えない位置だったけど、つけ終えた陽呂くんが「ホントに咬み痕に似てるな」なんて言ってたから間違いないだろう。

 制服で隠れる位置ではあるけれど、こんな……。


 咬み痕とは違う、本物の所有印。

 あたしが、陽呂くんのものって印。


 嫌か? って聞かれるとそこまで嫌な気はしない。

 その事にあたし自身ちょっとビックリだけど、好きな人が相手なんだからそうなっちゃうのかなって納得もする。


 でも、それとは別に恥ずかしい気持ちはどうしたって出てくる。

「うう〜……もう無理って言ったのに……」

「悪い……でも……」

 一度言葉を止めた陽呂くんは、掛け布団の上からあたしの頭の辺りを撫でた。


「他の男に、美夜を渡したくないから……」

「っ!」

 だから、キスマークつけたって事?
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