榊一族

「うむ、もう４時か。そろそろ帰ってくる頃じゃな。」

主は時計を見て言った。

するとドアをノックする音が聞こえた。

「入ってくれ。」

すると豪華な毛皮を身にまとい、指には手袋に高級な指輪がチカチカしていた。そしてたくさんの紙袋を家政婦さんに持たせていた。

「あなた、ただ今帰りましたわ。」

夫人はにこやかに言った。

「あら、こちらが探偵の方？はじめまして、妻の時子ですわ。この度の件、よろしくお願いしますね。」
「はい。はじめまして、中谷です。」

「おまえ、また衝動買いしたんじゃな。」
主は夫人の紙袋の数を見て言った。
「まあ、失礼ですわね。あなた、これは私がかねてから買おうと決めていたものですわ。あなたこそあの植木鉢の盆栽はなんですの？私見ましたけどそう昔ではありませんわね？」
夫人は庭の一番端にある新品そうな植木鉢を指して言った。
「まあ、それを言うでない。」

「まったく、新しいもの好きはどなたかしら？では、失礼しますわね、中谷様。どうかゆっくりしてくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」

夫人は優雅に歩いて行った。