榊一族
「久々に兄妹喧嘩したな。若い頃はしょっちゅうしてたけど。その度に兄貴が来てああやって説教すんだよ。」
龍之介は伸びをしながら言った。

「そうだ。お兄さんは美鈴さんと関係あるのか？」

俺は龍之介に聞いた。

「さぁ…俺もよく分かんねえけどさ、兄貴もあいつには冷たかった。親父にいっつも画家なんかをどうして家に住ませるんだって言ってたからな。ま、それはエリーの浮気を心配してだろうけど。」

「そうか…」

何だか俺の予想は当たったみたいだ。

長女は俺が来たことで完全に昔を思い出している。

「おまえが落ち込むことねえよ！」

龍之介は俺を叩いた。
「でも…」

「大丈夫だって！何か言われても気にすんなよ！俺がついてる。」

龍之介はにっこり笑った。

その笑顔は本当に優しくて安心した。

同時に龍之介はとても男前だと感じた。

「ん？俺の顔になんかついてる？」

龍之介は俺が複雑な表情をしていたのでそう聞いたのだろう。

「いや。」

俺は少し笑って煙草を灰皿に入れた。

俺たちは少し笑い合った。

…すると叫び声が聞こえてきた。
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