榊一族
「桜子、失礼ですよ。中谷さんはあら探しなんてしてないわ。ちゃんとお父様の依頼を受けて調査なさってるのよ。」

夫人が注意しても尚、長女は言った。

「…失礼なのはどっちなのよ?」

「桜子!もうやめてちょうだい!恥ずかしいじゃないの!」

夫人は耐えきれないように叫んだ。

「もうやめんか。」

主は一呼吸おいて静かに力強く言うと、そばにあった内線電話で誰かを呼んだ。

「お呼びですかあ?お父様。」

現れたのはえりさんだった。

えりさんは今の事態をなにも知らないので普通に笑顔で来た。しかしみんなの表情に目を丸くした。

「桜子を部屋に連れて行ってあげなさい。」

「はぁい。」

えりさんは静かに長女を支えて立たせた。長女は素直に従った。

「私も行きますわ。」

夫人が言った。

「お前はここにいなさい。」

「あなた!私はこの子の母親ですよ!」

「話があるんじゃ。」
時子さんはしぶしぶ残った。

主は今の一連のことにかかわった俺たちを別の部屋に呼んだ。

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