榊一族
「はあー。申し訳ない、中谷さん。お怪我はなかったかな?」

主はため息をついて申し訳なさそうに言った。

「ええ。大丈夫ですよ。」

「本当にごめんなさいね。あの子ったら…」

「わしらのせいじゃ。桜子ばかり責めてはならぬ。」

「…そうですわね。」

珍しく夫人は反論しなかった。

「お父さん、桜子は病院に行った方がいいと思うのですが。」

長男が提案した。

「俺もそう思う。」


「このままじゃあの子の心は壊れるだけだわ。剛さんや蘭と椿に話しましょう。」

続いて龍之介と夫人も賛成した。

「そうじゃのう…」

主もしかたないといったところだ。

「ただし今後桜子の精神が落ち着くまで中谷さんとは顔を合わせんようにせねばならぬ。すまぬが、ご理解頂きたい。」

「はい、わかりました。」


「とりあえずあなた、明日あの子を病院に連れて行きましょう。」
「うむ。」

皆が納得したその時、ドアのノックする音が聞こえた。

「失礼しまあす。お姉様、だいぶん落ち着いたんですけどお…」

えりさんは上目づかいで言った。

「私、行きます。いいでしょう?あなた。」
「ああ。行ってきなさい。」

俺たちは捜査に戻ることにした。
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