榊一族
『どうして?』

『僕はお父さんの写真を持ってるけど僕の写真は持ってないでしょ?』

秀明は秀の為に絵を描いてほしいって言ったんですね。

『ありがとう、秀明。僕の…こんな僕の為に…』

秀は秀明を抱き締めました。

『明子、今日はありがとう。秀明と君に会えてとても嬉しかった。

僕はこれからも影からしか支えることができないけど何かあったらすぐ連絡し…』

彼はこう言いかけて黙りました。

『もちろんよ、あなたは秀明の父親なんだから。これ、私の家の電話番号だから。』

私は彼に電話番号の紙を渡しました。

『僕のこと、旦那さんは知ってるの?』

一応結婚したことの一部始終は彼に話しましたし、主人には今日のことを言いました。

『ええ。主人も納得の上で来たわ。』

私がそう言うと、秀は悲しそうに笑いました。

『…そうか。わかった。』

すると秀明が言いました。

『僕もお母さんもお父さんは二人とも大事だよ!だから…』

秀は秀明の言いたいことがわかったのか、静かに遮りました。

『ありがとう。秀明…』

最後に秀は秀明を抱き締めて別れました。」

俺は改めて絵を見た。

過ぎ去った過去を懐かしんでいるようだ。
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