榊一族
ざっと30通くらいありそうな封筒が並べられて置いてある。

「手紙?」

龍之介が俺に聞いた。

「ああ。でも誰に宛てたんだろう…」

俺は封筒を一つとって開けてみた。

『お父さん、お母さんへ

今日はまた絵の依頼があったんだ。

最近依頼があるのがとても嬉しい…』

美鈴さんはどうやら日記のように両親に手紙を書いていたのか。

他の段も全て封筒でうめつくされていた。

「こんなに書いたんなら出せばよかったのに…」

龍之介が呟いた。

「彼…ご両親に迷惑だと思ったんじゃないでしょうか…」

明子さんが言った。

「そうか…俺もそう思うよ。あいつは可哀想なくらい優しかったからな。でも許せねぇのが一個だけある。」

龍之介は一通の手紙を俺と明子さんに見せた。

『僕が居ることで弟や妹が傷ついてしまった。

お母さんごめんなさい…

僕はもう帰ります。

短い間だったけど皆と過ごせて楽しかった。

ありがとう。

いつまでも元気でね。』

「血のつながりってそんなもんなのか?」

龍之介は壁にもたれた。

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