榊一族
「探偵さん、お酌をしますわ。」

そんなことを考えていたらえりさんが隣に座ってきた。

「あ、ありがとうございます。」

「ウフフ、いいんですのよ。でも…驚いたわ。あのテレビで有名な探偵さんがこちらに来てくださるなんて。感激だわ。」

えりさんは俺を真っ直ぐ見てとろけるような笑顔で言った。

「ああ、ありがとうございます。」

「ウフフ、緊張なさらないで。」

なんだかキャバクラに居るみたいだな。

俺は苦手だ。

にしてもえりさんはいくつなんだ?

孫がいるのにとてもそんな風には見えない。若々しくて、20代後半のような感じだ。

「えりさん、わしにも頼む。」

「はあい。お父様。では失礼しますね。」

そしてえりさんは主の隣に座ってお酌をした。

「お父様、今日のお着物とても素敵ですわ。お母様のお見立てですか?」

「いや、わしが選んだんじゃ。そうか、ますます気分がよくなった。もう一杯頼もうかの。」

「はあい。」

えりさんはにこにこしてお酌をした。

時子さんはふてくされた顔をしていた。

すると次男が酒の瓶を持って俺の隣に座ってきた。
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