榊一族
自分達は今生きていくのに精一杯で、この子を養っていける自信が全くない。自分達がこんな目に遭うのはいいが、この子には遇わせたくない。お金は働いて返すからとにかく育ててくれと言いました。

私はきちんと三人でやっていけるような自信がついたら改めてこの子を迎えにくることを条件に受け入れました。

最後に彼の名前を聞いたら、美鈴 秀と言いました。

彼らは自分達のことをこの子に話すのを固く禁じ、去っていきました。

そして何年か経ったんですが、彼らはお金を直接ではなく、間接的に、つまり銀行からお金を振り込んだのです。

私はお二人に電話して直接来て彼に会うことを再三再四言いました。

美鈴君だってとっても会いたがってたんですよ。

自分の両親はどんな人なのかしょっちゅう聞いて、会いたいなと言ってましたから。

私ももう誤魔化したりするの嫌でしたから。

しかし彼らは会おうとはしなかった。

そして彼らの両親はとうとうここの掟でもある高校を卒業するまでの費用を払い終えると一切関わりを絶ちました。

< 42 / 136 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop