榊一族

私はその後何度も電話をかけたんですが、出てくれなくて…そして彼が大学卒業後、コンクールで最優秀賞を取った後、お二人が亡くなったという連絡を受けました。

その間さまざまなことがありましてね。

一方、彼はすくすく成長し、父親に似て大人しく、母親ににてとても美しい面立ちでした。

しかしそんなに彼も人と関わらず、いつも絵を書いていましたね。

父親の才能を受け継ぎ、幼い頃から才能を見い出し、美術の道に進むことに決めました。

彼は両親の事は成長するにつれてあまり口には出さなくなりましたが、中学の進路面談のときに突然聞いてきたのです。自分の両親は今どこで何をしているかってね。

私はもう隠せなくなり、彼の出生の秘密を全て話しました。

彼はただ頷き、こう言いました。

「生んでくれてありがとうと言いたい。」

私はそれを聞いて涙が止まりませんでした。

そして彼に電話番号を教え、電話を掛けさせました。

「秀…なの？」

「お母さん？」

「ご、ごめんね…ごめんね…秀、お父さんとお母さんを許して…」

「僕はお父さんとお母さんに生んでくれてありがとうって言いたいんだ。」

「秀…ごめんね…もうちょっと待っててね。必ず迎えに行くから。」