榊一族
その時、家政婦らしき人がお母さんを呼んだんです。

全く、腹が立ちませんか。お手伝いさんを雇う余裕があるのにこの子を迎えに来ないなんて。私は後で言ってやりましたよ。

親の身勝手さで苦しんでるこの子の気持ちを考えろってね。

でも彼は電話に出てくれた母親にとても感謝していました。それがせめてもの救いかもしれません。

そして彼は美術科の高校へ推薦で入り、そこでもトップの優秀な成績を修め、美術の名門大学へ入りました。

うちの施設は18で卒業ですからね。18のときに進路面談をしました。

その頃私は親達に電話を掛け、彼の進路を彼と一緒に考えるように言ったんです。でも忙しいやら何かと理由をつけて彼に会おうとはしませんでした。

彼も親子で考えようとしているのに。それに待っているのに…

本当にもう、殴りこんでやりたいものでした。

彼にこのことを告げると、彼は悲しそうに笑って自分で考えると言いました。

そして彼はここを離れて、一軒家を選び、ローンを組んでそこに住むと言いました。

「いつか家族で一緒に住みたいんだ。」

彼はこう言いましたね。これが一軒家に住む訳です。

そして彼はアルバイトをしながらローンを返済していきました。』
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