榊一族
女性の声が聞こえた。

「はい、どちらさまでしょうか?」
「事件の依頼を受けた探偵の中谷と申します。」
「おまちしておりました。少々お待ちくださいませ。」

家政婦らしき人が門を開け、挨拶して俺を中に入れた。

立派な平安時代のような庭を通り過ぎ、和式の玄関を開ける。

スリッパに履き替え、更に広い廊下を歩き、主らしき人の部屋に着いた。

「こちらが主人の総一郎様のお部屋です。」
家政婦さんはノックした。

「中谷様をご案内しました。」
「おお、入りたまえ。」

入ると、厳しそうな和服の頑固親父が中央の机の椅子に座っている。部屋にはたくさんの本がある本棚が中央の机を囲み、絵画が壁を飾っている。

「よくおいでなすった、中谷さん。わしが依頼人の榊総一郎じゃ。」

主は立って挨拶をした。

「中谷です。宜しくお願いします。」
「うむ。そこの椅子に掛けてくれ。」

俺は中央の椅子の前にあるソファに腰をおろした。そして主は俺に向かい合って前のソファに座った。
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