榊一族
しかしわしは父にこう言われたとき言い返した。

『…お父さん、あなたは僕にも同じことをしたじゃないですか。それは正しいことではないんですか?』

わしは父が言うことなら何でも正しいとそう信じていた。

…けどこの言い方は薄情じゃな。わしは本当に愚か者じゃった。ここで気づいておれば…ここで気づかなければならなかった。

父はそれ以来わしの教育には口を出さなくなった。

しかし父が亡くなり、息子たちが成長するにつれてわしはますます自分の愚かさを知った。

おぬしも見たであろう、優之介と桜子の表情を。

優之介はめったに笑わなくなり、桜子はいつも悲しい顔をしておる。桜子は前はああじゃなかったが。

唯一龍之介だけは明るいのじゃがな。それは何故かわからんがわしはせめてもの救いだったと思っておる。

…しかしわしは何がどう間違っているのはわかったものの…

どうすれば息子や娘が幸せになれたかはわからんのじゃ…

美鈴さんの事件からずっと考えておるが…」

主は下を向いた。

威厳ある厳格な主の本音を聞いた俺も、考え始めていた。
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