榊一族
「あの、調査ですよ。ちゃんと総一郎さんの許可も取ってありますから。」

俺もびっくりしたが、疑われてはまずいと思い、説明した。

「そ、そうですか…」

たぶん納得してないだろう。長女から疑いの表情が消えない。

「あ、あの、桜子さんは美鈴さんと仲がよかったんですか？」

あ、これは聞いてはいけなかったかもしれない。

それを言うと長女はびくっとした。

「い、いえ…」

それだけ言ったが長女はまだ俺の手元を疑わしげに見ていた。

「そうですか…あ、あの、別に荒らしているわけではないですよ。調査が終わったらきちんと元通りにしますから。」

俺は言い訳をしているようだった。

「あ、はい…お邪魔して申し訳ありません。」

長女は去ろうとした。

「いいんですよ、気になりますよね、やっぱり。閉めておきますね。」

元はと言えば俺がドアを開けっぱなしにしていたのがいけなかったんだな。

俺はドアを閉めようとした。

「中谷様…」

長女の声は霧の彼方から俺を呼ぶようだった。

「はい…」

「中谷様は大変美鈴様と似てらっしゃるわ…」

そういった長女はとても美しかった。

…けど悲しい顔をして下を向いていた。

どこかで…見たことのある表情だな…

その時、別の美人が来た。
< 72 / 136 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop