榊一族

四季の中で…

「私は…その時もちょうどお茶を運んでおりましたの。

『どうぞ。』

『ありがとうございます。』

『お仕事はどうですか?』

『お陰様で。はかどっております。』

『きれいな春の風景ですね…』

『ええ…僕は春が一番好きです…』

美鈴さんは私をしかと見つめておっしゃいました。

『桜子さん、あなたを描かせてください。』

『私を?』

『だめですか?』

『いいえ、私でよろしければ。』

それがこの絵です。」

長女は淡々としゃべった。

俺は改めて絵を見た。

見れば見るほど長女だ。

「それで、おまえは美鈴さんを愛しておったのじゃろう?」

主がそれを言うと長女はびくっとした。

「それをお話しするためにここに来たのではありませんわ。」

「頼む、桜子。それも教えてほしいのじゃ。もちろん、誰にも言うつもりはない。」

「私は…私もあの絵は誰を描いたのか知りたいのです。ですから調査のためにこのことを申し上げたのですわ。私自身のことを申し上げに来たのではありません。」

長女は急に怒った。

「それも関係がありそうだから言えって言ってんだろうが。」

気がつくと次男がそこに居た。
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