GET BACK TOGETHER
「とりあえず大掃除手伝って」

お母さんがゴム手袋を差し向けてきた。

それなら自分の家の大掃除をやりたいよ。

やっぱり帰ってくるんじゃなかった。


それから散々コキ使われて掃除した後、


「買い物行くわよ、頼りないけど荷物持ち」

まだコキ使わされるようだ。


帰りたくなかったのは親の小言もあるけれど、地元に帰ると光輝との思い出が蘇ってくるから。

家の前だって、高校までずっと私を送り届けてくれた光輝の姿が浮かんでくる。

別れ際はキスを必ずしてくれて、顔が離れるといつも目尻を下げた優しい顔になっていたこととか……。


車が発進するとすぐに公園が見えてきた。

あの公園で初めてキスをした。


やっぱり光輝との今とはかけ離れた優しい思い出ばかりのこの町に帰ってくるのは辛い……。




スーパーに行くと沢山の人で溢れ返っていた。
皆、年越しとお正月のために買い出しに来ているのだろう。

私はカートを押しながらお母さんにビクビクついて行く。
地元の人間にあまり会いたくないから。
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