GET BACK TOGETHER
「映画はサスペンスもの。苦手?」

「好きですよ」

「良かった」

私の返答に安堵した顔に変わった大知さん。

「パン一つだけ買っていこう。試写会の会場で食べよう、お腹空いちゃうから。で、終わったらご飯行こう」

「え?」

「絵麻ちゃん、ずっと顔色悪いから栄養のあるもの食べさせたい。絵麻ちゃんの身体が心配だから……」

私の顔を見ながら眉を下げる大知さん。

食欲も食べる気力も沸かないけれど、ここまで心配されたら断れない……。

「わかりました……」

「お肉を食べてスタミナつけよう!」

大知さんは楽しそうに笑った。


大知さんはあれから私に触れたりもしない。

ずっと一定の距離を保ってくれる。

紳士で、優しくて……


どうして私は大知さんのような人に恋をしなかったのだろう……



『ぐにゃり』


突然視界が歪んだ。
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