GET BACK TOGETHER
「俺からは何も言えない」

そして男はその一点張り。

俺は鞄に入れていた名刺ケースから名刺を取り出すと男に差し向けた。

「それならせめて俺の名刺を彼女に渡してもらえませんか?そこに書いてある電話番号に電話して欲しいと」

でも男は受け取ってくれない。

「俺、絵麻に会えるまでずっとここで待ってます。お願いします!」

すると漸く渋々だが受け取ってくれてホッとした。

「貴方の名前、教えてくれませんか?」

「何のために」

「聞きたいんです」

はぁっと溜め息をついた後言った。


「大知正親《だいちまさちか》」


名前だと思っていた『ダイチ』は苗字だった。

俺は自分の思い込みに心底腹が立った。


大知の背中を見送ってから、俺は再び絵麻を待つ。

アイツが現れた。
絵麻もきっと来る。

二人はきっとただ同僚。
俺は絵麻を信じる。
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