冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。

一階のリビングに向かうと室井さんが濃グレーの大きなソファにゆったりと腰掛けて新聞を読んでいた。

…なんだか絵になるなぁ。

それをその場でぼんやりと見ていたら、わたしに気付いた室井さんが振り返り

「ああ、キミか。荷解き疲れただろう?ここでひと休みしよう」

フッと微笑みながら自分の隣を指す。

わたしは慌てて指定された席に腰掛けた。

そしてまり子さんがわたし用だと言ってピンクの細かい花柄が施してあるティーカップを用意してくれて、りんごの香りがするお茶を注いでくれた。

クピッとひと口飲むと鼻腔に抜けるのはやっぱり爽やかなりんごの香り。
でもこれ、紅茶、だよね…?

「アップルティーは初めてか?」

室井さんがちょっと驚いている。

「は、はい。祖父母の家では日本茶ばかりでしたし、ひとりになってからもそれは変わらなかったので…」

えへへと力なく笑うと室井さんとまり子さんは、温もりのある目で返してくれた。
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