冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
夕飯は、18時キッカリに3人席に着いて食べ始めた。
まり子さんの愛情がたっぷり詰まった家庭料理の数々。わたしも手伝ったとはいえ、味付けはほとんどまり子さんがした。
優しい味がする。
…どれも本当に美味しいな。
まり子さんの腕前のお陰で食はすすんだけど、食事をしている時に会話は一言もなく、それも後から「坊っちゃまは食事中の会話は嫌がるの」と教えられた。
食後は、わたしとまり子さんは後片付け、室井さんはお風呂に入った。
片付けの最中、まり子さんに
「…あの。室井さんって結構気難しい方なんですか?」
おずおずと聞けば、まり子さんは目をパチクリして
「そうねぇ、確かにちょっと神経質なところはあるけれど、慣れちゃえば可愛いところもあるのよ?」
と、にっこり笑った。
…可愛いところ、ねぇ…。
わたしはその可愛さを見つけ出す自信がまるでない。
ハァ、と盛大なため息をつくと、まり子さんはまたフフッと笑ってみせた。