冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
パタパタと駆け足でリビングに入ると、朝食が並べられたテーブルに姿勢よく腰掛け、新聞を読んでいる室井さんがいた。
「お、おはようございますっ!すみません寝坊してしまってーーー」
深々と何度も頭を下げて謝ったけど、室井さんの反応がない。
こ、これは本気で怒っている…。
怖くて顔を見る事が出来ない。
どうしよう。どうしよう…っ。
「…プッ」
「え?」
いま、プッて吹き出した声が聞こえた?
恐る恐る顔を上げ、室井さんを見ると室井さんは笑いを必死で堪えていた。
「む、むろい、さん?」
何がどう可笑しくて笑いを堪えているのかが全く解らないわたしは、ただただ焦る。
「クククッ…ハハッ」
そんなわたしを他所(よそ)に室井さんは堪らず笑いを吐き出した。
笑い方がなんかセクシーだけど。
「キ、キミッ、どんな寝方をしたらそんな寝癖がつくんだ?…ククッ」
笑い方は控えめなのに本当に可笑しそうに言うものだから、気になって近くにあったまり子さんの手鏡を借りて自分を見た。
そこには、、、
「ぎゃあああぁぁぁあっっ!!!」
わたしの顔をしたメデューサが最悪な状態で映っていたーー。