冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
1.
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「…」
ゴクリ。
つい生唾を飲んでしまった。
目の前にあるのは、
『即日キャッシュお渡しOK!審査なし!』
と、デカデカと書かれた看板。そのすぐ奥がそのお店。
…ヤバいお店なのはわかる。わかってる。
だけど、ガス、水道、電気とライフラインを全て止められ、全財産56円のわたしが1日でも長く生きる為には致し方無いのよ。
腹は括(くく)った筈なのに足がまるで先に進んでくれない。
通りすがりの人達の視線を感じながら5分程その場に立ち尽くしていると、
「おねぇ〜さんっ」
チンピラみたいな若い男が軽くて懐っこい声でわたしに近付いてくるなり、
「お姉さんお金欲しいの?」
と、わしっと肩を掴んできた。
「わっ…!あ、えっ…と…」
「あれ。お姉さんかと思いきや…もしかして未成年?」
わたしがビックリして顔を上げるとチンピラは眉間に皺を寄せる。
「あ、いえ、に、22才です」
「ほんと?」
「は、はい」
「あぁ良かった!未成年に金貸せないからさぁ。お姉さん金すぐ欲しい?」
「あ、はい。出来れば…」
「すぐ貸す事は出来るんだけどぉ、お姉さんの場合はさぁ、金借りるより今日すぐ稼いじゃいなよ!良い店紹介してあげるからさっ」
そう言いながらチンピラはわたしの全身を舐め回すように見てニタニタ下卑た笑いを浮かべた。