冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。

「この服、用意してくれたのって、まり子さんですよねーー?」

「そうに決まっているだろう」

まり子さんが反応するより早く室井さんがわたしの問いに答えた。

「わたしがキミに似合う服なんて用意出来るわけがないだろう?」

「そう、ですよね。…すみません」

そんな言い方しなくったって…

やだ。また泣きそう…。

じんわりとわたしの目頭が熱く潤ってきたのを室井さんは気付いたのか、少しバツが悪そうにしながらも

「ーーだが、よく似合っている」

わたしの耳にギリギリ聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で呟いた。

「っっ、」

パッと顔を上げれば室井さんはまた背を向けてしまっていた。

よく見れば室井さんの耳、赤くなってる。

嬉しいやらビックリするやらでわたしの溜まった涙がすっかり引いていた。

そんなまだまだぎこちないわたし達をまり子さんは温かな笑顔で見守ってくれていた。

「あ、あのっ、わたしは今日は何をすればいいのでしょうか?」

「あぁ。昼から早速「妻」としての責務を果たしてもらう」

「ぁ、は、はいっ!」

そうだった。妻のしての責務を果たすこと。
それがわたしがここに置いて貰っている理由だった。






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