冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。

「っ、それは…、誤解だ」

「何が誤解っ…」

「ちゃんと話すから鍵を開けてくれ」

どこまでも優しく落ち着いた声に、わたしの激情も少しクールダウンして、仁さんの「話し」とやらを聞こうと、カチャリ。と内鍵を解いて、少しだけドアを開けた。

そこからチラリと見えたのは、仁さんの真剣な顔。

「は、話しって…っ」

「部屋に入ってもいいか?」

そう言われて、わたしは返事を言う代わりにドアを完全に開くと「ありがとう」と言って仁さんがわたしの部屋に入ってきた。

わたしの部屋はほとんど引っ越して来た日のまま。

いつでもここから出て行けるように、荷物も特に増やしていなくて。

仁さんはそれに気付いたのか、寂しそうに部屋を見渡すと、わたしの1番のお気に入りである天蓋付きのベッドに腰掛けると、わたしに「おいでおいで」をしてきた。

どうしようか少し迷ったけど、大人しく従うことにして仁さんの左横に座る。

仁さんはそれを確認するとゆっくり、まるで割れ物に触るようにそっとわたしの右手を取り、するりとわたしの指と自身の指を絡ませてきた。

「っっ!」

それだけで、わたしは恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になってしまった。

その様子を見てフフッと笑った仁さんは、

「こんな可愛い女の子がいるのに、他の女とどうこうなるわけないだろ」

それはまるで、恋人に囁くような声音で。

「でもっ…!」

「私の仕事の担当者が女性でな。打ち合わせとかもっと細かい話とかになると長時間近距離にいる時もあるんだ」

「そんなのっ!打ち合わせなら自宅ででもできるんじゃないの?」

すると仁さんは「うーん」と天を仰ぎ、

「…恥ずかしかったんだ」

「なにが?」

「キミに、作品の打ち合わせの話の内容を万が一知られたらと思うとね」

「それって、どういう…」

すると、何らかな意を決したらしい仁さんが、




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