冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
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「…う〜ん」
クリスマス1週間前。わたしはまり子さんに連れられて街の可愛い雑貨屋さんに居た。
まり子さんはわたしがプレゼントを選んでいる間に色々買い物を済ませたいらしく、後程またここにわたしを迎えに来てくれるそうだ。
プレゼントは腹巻きっ!!と、決めてきたのに
いざお店に入ったら目移りすることすること。
白くまの抱き枕にペアのマグカップに、仁さんが好きなラベンダーの香りがするディヒューザーに…。な、悩ましい。
因みに腹巻きはサイズフリーなので、スラッと細身の仁さんなら大丈夫そうだ。…ピンクのブタ柄のが可愛すぎる。
もうかれこれ1時間近く悩んでいるのだ。
いい加減決めないと。
その時、
「あのっ、」
「え?」
聞き慣れない男性の声が上から降ってきて、かがんでいた姿勢を真っ直ぐに直してみると、
「あ、やっぱり。室井先生の奥さんだっ!」
仔犬みたいに無邪気な笑顔を見せたこの人はーー、
「…仁さんの、マネジャー、さん?」
自信無さげに答えると「そうです!そうです!」と、嬉しそうに何度も頷く。
身長は仁さんより10cmちょっと低くて、中肉中背。清潔感がある茶色の短髪に涙ぼくろが印象的な、確か名前は…
「松永(まつなが)、さん…?」
「当たりですっ!一度見ただけ、しかも話した事ない僕の事覚えてるなんて凄い記憶力ですねっ!」
ニカッと笑った時に、八重歯も見えた。
わたしの事も同じ条件だった筈なのに覚えているじゃないですか。と、言いたいのをグッと我慢して呑み込んだ。
「あの、どうしてここに居るんですか?」
今日は仁さんお仕事の打ち合わせだからと、会社へ行ってしまったというのに。