冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
「え?」
破壊力?
わたしが何のことかと聞き返しても松永さんは「何でもないです」と笑って答えてはくれなかった。
「ところで、もう先生にあげるプレゼントは決まりました?」
すぐ隣に立たれてドキリとする。
トキメいたわけじゃない。怖いだけ。
元々男性に対して免疫がないのだ。側に居られるだけで、訳もわからずただ怖い。
「え、と…。は、腹巻に、しようかと」
わたしが俯いて言えば、少し待っても反応がなくて「あれ?」と思い、恐る恐る顔を上げて松永さんを確かめる。
すると、何故か顔を真っ赤にして必死で笑いを堪えていた。
「あの…?」
笑える事なんて言ってないのに。
キョトンとしていると我慢の限界に達したらしい松永さんの豪快な笑い声がお店中に響いた。
ゲラゲラ笑う松永さんの横で驚きのあまりフリーズしたわたし。
「は、腹巻きっ…!!あんな冷徹なひとがっ!腹巻き!!しっ、死ぬ!!」
人目も憚(はばか)らず涙を流しながらヒィヒィ大笑いしている姿を見て、フリーズしていたわたしもついつられてクスクス笑ってしまった。
わたしの笑っている姿を見た松永さんは急に笑うのをやめて、わたしの頬に向かって手を伸ばしてきた。
「っ、」
わたしが後退りする前に誰かに後ろからお腹に腕を回され引っ張られた。
ふわりとそのままバックハグされた形になって焦ったけど、この人の安心する匂いは嫌ってほど知っていて。