冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
「…ん、」
ただ瞬きをしただけかと思ったら、太陽の温かさを感じられた昼から、夕暮れへと空が変化していた。
それに、下はソファーだったのに、今は見慣れないベッドに寝かせられている。
ここは…?仁さんは何処?
ズシリといつもの数倍ぐらいの重力を身体に感じながらなんとか上半身を起こして辺りを見渡すが、薄暗くて周りがよく見えない。
すると、ドアが開く音がして、
「ああ、目が覚めたのか」
愛しいひとの声と共に天井の電気がパッと点いた。
「仁さん…。ここは?」
まだ頭がボーッとする。
「私の部屋だよ」
フフッと微笑みながらわたしの元へ近づいてきて、軽くキスをくれた。そのままその大きくてしなやかな手でわたしの頬を愛おしげに撫でながら
「…だいぶ無理をさせてしまったみたいで、すまなかった」
と、眉根を下げた。
「え…?あっ、」
一瞬何のことか解らなかったが、昼間の情事を思い出し、途端にカァッと身体が熱を持った。
「身体、辛くないか?」
「は、はいっ!それはもう元気ですっ!!」
いつもより優しい態度の仁さんに、どうしていいのか分からなくて焦ってしまう。
「そ、それより、どうしてわたし仁さんのベッドに寝てたんですか?」
とにかく普段通りになる為に話しを振らねば。
だけど、そんなわたしの思惑とは裏腹に、
「ああ。今夜からはわたしのベッドで一緒に寝よう。…夫婦なんだしな」
なんとも、なんともな応えが返ってきて余計に焦ってしまってクラクラきてしまう。
現実に頭がついていけない。
しかもあの仁さんがちょっと照れてる可愛い。
わたしが何も返事をしないのを悪い方に取ったのか、
「…嫌なら、無理にとは言わないが…」
今度は軽くしょげた感じになって、これまた可愛いと思ってしまう自分がいた。
男の人を可愛いなんて思ったことないのにな。
自分のきもちながら不思議な感じだった。