冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
「嫌なわけないじゃないですかっ。ただ、その、嬉しいなと言うか、可愛いなと言うかっ」
「…可愛い?」
「あ、わたしがじゃないですよ?可愛いのは仁さんですからねっ」
「はぁ?」
わたしのデレ顔に、思いっきり不満気な顔をした仁さんは、
「わたしの何処が可愛いというんだ?可愛いだなんて、子供の頃以外で言われたことないぞ」
頭かどこか打ったりしてないか?と心配している振りをして、わたしの身体を愛おしそうに触れる仁さんも、また可愛い。
「ふふっ」
思わず吹いてしまうと、仁さんはいよいよ本気で心配したのか真顔になって、
「本当に頭打ってないだろうな?」
頭にコブが出来てないか確かめ始めた。
「ちょっ、どこも打ってませんっ!」
髪の毛ぐちゃぐちゃにされたら堪らないと、抵抗するも仁さんは結局コブがないか頭の隅々まで探り、髪の毛をぐっちゃぐちゃにしてその手を離した。
「…」
「メデューサか。なかなか懐かしいな」
「っ誰のせいだと思っているんですかっ!」
思い出に浸りそうになった仁さんにピシャリと雷を落とす。
だが、わたしの雷ごときじゃ仁さんに効くはずもなく。
「腹減ったから、そろそろ夕飯にしようか。今日はまり子さんが作れなかったから代わりにわたしが作ったぞ。ビーフカレーだ!」
「ビーフカレー!好きですっ!!」
わたしの機嫌の直し方を熟知している仁さんはあっという間にわたしの機嫌を良くした。