冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
そんなわたしを見逃す仁さんな筈はなくて、わたしを優しく抱き寄せると、
「…嬉しいのか?」
そっとその指で今にも溢れそうだった涙をすくってくれた。
「っ、はい」
「ちょっと、そこイチャつかないでくれる?」
「黙れ詐欺師が」
「はぁ!?黙れロリコンおやじがっ!」
…なんて言うか、仁さんと瑠璃子さんは性別を超えた親友同士のような雰囲気がする。
それはそれでちょっと羨ましいな。
「ちさとチャン!こんなクソジジイとなんかさっさと別れな!?あたしがもっとちさとチャンに相応しい若くていい男見つけてあげるからさっ」
「変なことを千聖に言うのはよせ!だいたい今回お前にこんな無茶で頭の弱い奴が考えそうなことを吹き込んだ男は一体誰なんだ!?」
勢いなんだろうけど、イキナリ核心を突いた事を聞いた方も聞かれた方もピキッと固まった。
「りゅーじぃ」
その均衡(きんこう)を破ったのは光輝くんだった。
「こぉくん、りゅーじきらい。ままじゃないにおい、いっぱい」
「光輝…」
今にも泣き出しそうな光輝くんを瑠璃子さんは愛おしく抱きしめた。
「りゅーじ…だと?」
途端に眉間に皺が寄る仁さん。
「お知り合いに同名の方がいるんですか?」
なんとなく聞いてみた。
「あぁ。まさかとは思うが…。おい瑠璃子、その「りゅーじ」って男の苗字…もしかして「松永」じゃないか?」
「「えっ!!??」」
わたしと瑠璃子さんの声がシンクロした。