冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
「仁さん。まさか、いくらなんでも…、」
「なんで知ってるのよ!?」
わたしの、そうであって欲しくない気持ちは自分の言葉が言い終わらないうちに粉砕(ふんさい)した…。
「…私の元マネジャーなんだ。底無しの女好きで千聖にも手を出そうとしたからその場でクビにしたがな」
「アイツ、ちさとチャンにまで手を出そうとしたの!?あたし以外にも女いるし、その他に一晩だけの女なんか数知れずいるのも知ってるけど…まさか、ちさとチャンにまで手を出そうとしたなんて…最悪」
「…お前、よくそんなこと知っておきながら付き合い続けているな」
苦虫を踏み潰したような顔で瑠璃子さんが松永さんのとんでもない女性関係を暴露し、仁さんとわたしはすっかり呆れ顔だ。
「割り切った関係だから楽だったのよ。何股もかけてるだけあって、色々マメだし優しいしね。でも、まさか、ちさとチャンにまでとは思わなかったわ。萎えた。別れよ」
「りゅーじとばいばいするのぉ?こぉくんうれちぃ」
「…おい。まさかこの子の父親って、」
「龍司(りゅうじ)じゃないわよ。そんなの当たり前じゃない」
それを聞いて仁さんとふたり心底安心した。
あの人どう考えても甲斐性(かいしょう)なさそうだもんなぁ。
「…もしかして龍司、あたしが仁と昔関係あったのをどこかで知ってそれを利用しようと…」
「だいたいそんなところだろうな」
「最悪っ!このあたしが利用されるなんてっ!別れる前に復讐してやるわ!!」
真実を知った瑠璃子さんは怒り心頭で背後にメラメラと燃える炎が見えるじゃないかってぐらい。