冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
「とんだクズ男だな、アイツは」
仁さんは仁さんで静かに激怒している。
兎にも角にも光輝くんの父親問題の黒幕は松永さんだと分かり、仁さんは今回被(こうむ)った迷惑等を全て会社に報告をすると何故か楽しそうに言い、その光輝くんの本当の父親は仁さんの予想通り当時の浮気相手だそうで今でも連絡は取り合っている仲らしく、
「フリーになった事だし、勢いでソイツと結婚しても良いかもねぇ。光輝の本当の父親なワケだしっ」
と、彼女は彼女でまた機嫌良く我が家を後にした。
こうして、今回のトラブルは解決したわけだけど、
わたしにはまだしこりが残っている部分があった。
それは…、
ーーコンコンッ。
ボーッとしていた頭が部屋のドアがノックされて瞬時に覚醒する。
「はいっ」
「…千聖ちゃん、ちょっといいかしら」
「まり子さん?はいっ、ど、どうぞっ」
反射的に時計を見ると21時を過ぎていて。
まり子さんの勤務時間は20時半まで。それにも関わらずまだ帰ってないのは珍しく、何かあるとピンっときた。
「まり子さん、あの、今日は本当にお疲れ様でした。仁さんならいまお風呂に、」
「いいえ。坊ちゃまではなく、千聖ちゃんに渡したい物があって、」
「え?あ…、」
そう言えばお正月にわたしに渡したいものがあるって言っていたんだっけ。
あの日は色々あったからそれどころじゃなくなって、まり子さんもその日以外何も…