冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
6.
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「仁さん、ご飯の支度調いました」
「あぁ、ありがとう」
午前7時。
わたしが作った朝食をふたりで黙々と食べる。
ーー2日前のあの日の翌日から、まり子さんは来なくなった。
すぐさま契約書に書かれていた住所に赴(おもむ)いたがすでに、もぬけの殻で、ケータイも解約済み。
藁をも掴む思いでご両親に電話で事情を説明し行方を知らないか聞いたが、歯切れの悪い感じで「わからない」としか答えてくれなかった。
「あの感じは何か知っているな…」
ご両親の反応に違和感を覚えたのは、どうやら仁さんも同じだったようで、今日この後こんどは直接ご両親に話を伺いに行く予定になっている。
「ご馳走様でした」
「千聖、後片付けは私がするからキミは出掛ける準備をしてきなさい」
「でも、」
「大丈夫だから」
「…はい。では。すぐに」
パタパタと二階に上がり、最近造ってくれたわたし専用のウォークインクローゼットで服を選ぶ。
この家に来てから暫くは、いつ出て行くことになってもいいように物を増やさないようにしていたけれど、仁さんと愛し合うようになってからは徐々に服やら小物やらが少しずつ増えていった。
…その殆どが仁さんからのプレゼントなのだけれど。
今日はゆっくり服を選んでいる時間はないので、シーンを選ばない服をパパッと選んで着替えて薄く化粧を施し、髪はサッと結い上げた。
そして、急いで下へ降りようとしたとき。
ふと、元の自室が気になった。