冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
引っ越しは、なんとか家賃だけは滞納せずにいたので多少は無理したけど室井さんが管理会社に取り入ってくれて退去費用さ後日払うって事で折り合いがついて、こちらも本当に即日引っ越しが出来てしまった。
引っ越し業者のトラックを道案内する為にその前を室井さんが運転する車が走る。
わたしはその助手席に座っていた。
なんて言うのか忘れちゃったけど、これ、外国産の高級車だよなぁ。
なんてぽやんと考えていると、車はどんどん市街地から離れていき郊外へと向かう。
40分ぐらい車を走らせ大きな森の手前までくると、緑一面に囲まれた豪邸が現れた。
「…え、室井さんの家って、ここですか?」
「なんだ、不満か?」
「い、いいえ、逆です!こういう森の中のお家って、ずっと憧れていてっ」
よっぽどキラキラした目で家を見ていたのか、そんなわたしを見て室井さんは嬉しそうに目を細めた。
お金に苦労していたわたしの引っ越し荷物なんてたかが知れていて、家に着いた1時間には引っ越し業者は仕事を終えてこの場を後にした。