冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
室井さんの自宅は、ドイツ西部の町にあるようなモノトーンで統一された木組み建築のまるでメルヘンの町に建てられているような家だった。
両開きドアをくぐると、優しそうな老女が「ようこそ」と迎え入れてくれた。
荷物を運び入れている時は荷物こそ少ないとはいえ、それなりにバタバタしていた為に家の間取りや内装を見やる余裕はなかったが、業者さんが帰った後で、室井さんから「今日からここがキミの部屋だ」とあてがわれた部屋をマジマジと見てみると、まるでお姫様が使うような家具がひと通り揃っていた。
しかも何となくわたしの好みに近いような?
ぼんやり部屋を見渡していると、コンコンッと部屋のドアがノックされハッとなって
「はっ、はいっ!」
勢いよくドアの方へ向けば、先程迎え入れてくれた老女がにっこり笑って立っていた。
老女は白髪を綺麗に結い上げ、着物に割烹着姿で、どことなく自分の祖母に姿が重なる。
…おばあちゃんも、いつも着物に割烹着姿だったな。
感傷に浸ろうとしていたら、
「奥様、お茶のご用意が出来ましたので少し休まれてはいかがでしょう」
奥様という言葉に思わず仰天した。
お、お、お、奥様…!!